激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
1突然の裏切り
■突然の裏切り
定時を過ぎたオフィスはひと気がなくがらんとしていた。
そんな中、私はパソコンのディスプレイを見ながらキーボードを叩く。
「早川さん、悪いね。急な残業をお願いして」
申し訳なさそうな顔をする部長に、「いえ。もう終わりますから」と笑顔で首を横に振った。
私、早川日菜子が勤めているのは中堅の専門商社だ。
半導体などの電子部品を輸入し業界向けに販売している。
国内外に事業所があり、取引先とのやり取りは英語がメインになる。
私は正社員ではなく契約社員で、貿易関係の書類や輸送手配、契約書などの翻訳をしていた。
完全に裏方で、ほかの社員をサポートするのが私の役目だ。
「お待たせしました」
できあがった書類を部長へ手渡す。
部長に頼まれたのは、輸出業者から受け取った仕入書や貨物の梱包明細書などの輸入関係書類の翻訳だ。
税関に申告しなければならない大事な書類。
記載内容に不備があれば、密輸入で関税を脱税したととられ加算税が課せられることもある。
そんな大きな不備はめったにないけれど、万が一に備えいつもきっちりと確認をしている。