激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 私はそんなことをした記憶はないのにと不思議に思う。

「あれ、亮一さんは……?」

 昨夜の送別会のあと、康介にからまれているところに亮一さんが現れ私をかばってくれた。
 そして車で私を家まで送ってくれた記憶があるけれど……。

 もしかしてあれは夢だった?

 自分の記憶に自信がなくなる。

 だって、アメリカにいるはずの彼があんなタイミングで助けに来てくれるなんて、ありえない。
 たぶん、酔っぱらって願望を夢に見てしまったんだろう。

 そう結論付けてベッドから起き上がろうとすると、左手のあたりで何かが光った。

「え?」

 自分の手を見下ろす。
 薬指にいつの間にか指輪がはめられていることに気づき、驚きで息をのむ。

 私の左手の薬指で光っているのは、プラチナの結婚指輪だった。
 透明な輝きをたたえたダイヤと青くきらめくサファイアが交互に配置されている。サファイアは私の誕生石だ。

 左手を持ち上げ、まじまじと見つめる。

 ダイヤもサファイアもうっとりするほど美しくて上質な石だとわかる。
 豪華だけれど上品で、とても素敵なデザインだった。

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