激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「もしかして、亮一さんが……?」

 指から外して内側を見る。
 そこには婚姻届けを提出した日付とR to Hという文字が刻印されていた。

 イニシャル入りの刻印に、誕生石のサファイア。
 思いつきで買ったわけではなく、前もってわざわざ用意してくれたんだ。

 胸がいっぱいになる。

 ローテーブルの花瓶のそばには、彼からのメッセージが置いてあった。
 酔った私をこの部屋まで送り、ベッドに寝かしたあとに書いたんだろう。

 手帳のいちページを切り取ったらしいシンプルな罫線が引かれただけの紙に、綺麗な文字が並んでいた。

『日菜子、誕生日おめでとう。直接渡して君の反応を見たかったけれど、幸せそうに眠る君を起こすのは申し訳ないから指にはめておきます。愛を込めて。亮一』

 彼らしい簡潔な文章だった。

 愛を込めて、という最後の部分を三度読み返して顔を覆う。

「あー、もう……っ」

 こんな文章、反則だ。
 胸のあたりがふわふわしてじっとしていられない気分になる。

 どうしよう……。こんな完璧な旦那様を演じられたら好きになってしまう。


 亮一さんは知っているんだろうか。
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