激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
『うちに挨拶に来たら、信頼できる男かどうか俺が厳しい目で見極めてやるからな』なんて、肩慣らしするように腕を回しながら無駄に気合いを入れていたけれど。

 それなのに、浮気をされて別れたなんて。
 しかも仕事も辞めることになったなんて。

 兄が知ったらがっかりするに違いない。
 そして、情けない私を放っておけないと今以上に過保護になるかもしれない。

 兄には早苗さんという素敵な恋人がいた。
 兄よりひとつ年上で、姉御肌のさっぱりとした性格の人だ。
 付き合ってもう四年になるのに、ふたりはまだ結婚する予定はなかった。

 その原因は私だ。


 過保護な兄は、『日菜子をひとりにして自分だけが結婚するなんて、天国の両親に申し訳ない』と言い張っているのだ。

 私なんか気にせず、ふたりには幸せになってほしい。
 何度そう言っても、頑固な兄はうなずいてはくれなかった。
 全部、私が頼りないせいだ。

 私なんて、誰にも必要とされていないのに。
 このままじゃ、大好きな兄の足枷になってしまう。

「どうすればいいんだろう……」

 途方に暮れながら歩いていると、大きな橋に差し掛かった。

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