激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
6彼の想い人
■彼の想い人
数日後、私は大使公邸で開かれたパーティーに参加していた。
美しい日本庭園を望める大広間には百人以上もの要人たちが集まっている。
アメリカの国務長官や上院議員。
そうそうたる顔ぶれに、緊張で身震いしそうになる。
男性は上質なスーツ、女性は華やかなドレス。
まるで社交界のようにきらびやかな世界だ。
私は薄い桃色の色留袖を着ていた。
大使夫人がプレゼントしてくれたもので、裾に入った上品で繊細な花々と、金刺繍がほどこされた帯が美しい。
「和装の日菜子を見るのははじめてだが、似合うな」
そう言って微笑むのは、シックなブラックスーツを身に着けた亮一さん。
長身で逞しい体躯をもつ彼がフォーマルな服装になると、いつも以上の色気が漂う。
黒髪をうしろに流すようにセットしていて、形のいい額と凛々しい目もとがはっきりと見え、より一層精悍に見えた。
「亮一さんも素敵です」
「ありがとう」
にこりと笑い、私をエスコートしてくれる。
彼が歩くと会場にいる女性たちの視線も一緒に動く。
あらためて彼の魅力を思い知らされた気分だ。