激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
『ま、咄嗟のときに出るのは人の本性ですもの。あの場で私をかばってくれた日菜子のことは信用しているわ』
『ええと、ありがとうございます』

 困惑しながら頭を下げた私を見て、彼女はふふっと笑う。

『着物姿もかわいらしいわね。私、着物は大好きなのよ』
『ありがとうございます。大使夫人が用意してくださったんです。彼女はとても知的で、着物にも日本文化にも深い知識を持っているんですよ』
『あら、本当? ぜひお話ししてみたいわ。紹介してくれる?』
『もちろんです』

 そんな会話をしていると、大使と大使夫人がやってきた。

『よく来てくださいました』と丁重に彼女をもてなす。

 その様子でミシェルさんが大使にとっても重要なゲストだということが伝わって来た。

 私は少し離れたところで亮一さんに耳打ちする。


「あの、彼女はいったい……」
「アメリカの有名な慈善家だ。多くの著名人が彼女の活動に賛同していて、経済界に強い発言力を持っている」
「そんなすごい人だったんですね」

 アメリカはボランティアが盛んな国だ。
 有名経営者やセレブが多額の寄付をして話題になることも多い。

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