激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「そんなことない。ひとりの女性をうまく口説けずに、ずっと苦戦してるよ」
「苦戦? 亮一さんが?」

 私が首をかしげると、彼は苦笑いを浮かべた。

 亮一さんが口説いてもなびかないなんて、いったいどんな女性なんだろう。
 もしかして前に亮一さんのお父様が言っていた、ずっと想いを寄せているという女性なんだろうか。

 胸のあたりににぶい痛みを感じる。

 そのとき通りかかった女性が足を止めた。

「あら、亮一?」と驚いたようにこちらを見る。

 胸のあたりまである黒髪が印象的な、綺麗な女性だった。
 背中が大きくあいた露出の多い黒のドレスを上品に着こなしている。

 私も平均よりは身長が高いけど、彼女はそれ以上だった。
 手足が長くとてもスタイルがいい。思わずみとれそうになる。

「怜奈?」

 亮一さんが名前を呼ぶと、彼女の表情がほころんだ。

「久しぶりね。元気にしていた?」
「あぁ」

 亮一さんは両手を広げた彼女を抱き寄せ、親し気に頬を寄せ合う。
 長身のふたりが抱擁を交わす姿は、まるで映画のワンシーンのようだ。

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