激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「いいですよ。完璧な瀬名さんにはこういうときにしか恩を売れないので。日菜子さん、今日は瀬名さんについていてあげてください」

 浜辺さんの言葉にうなずこうとしたけれど、それよりも早く亮一さんが首を横に振った。

「いや、日菜子はついてこなくていい」と拒絶され、ショックで目を見開く。
「どうして……?」
「わかるだろ。余裕がないんだ。薬が抜けるまで俺はホテルに泊まるから……」

 彼は私から目をそらしたまま言う。

 この部屋に入って来てから亮一さんは一度も私のほうを見ていない。
 避けられているんだ。そのことに気づき、胸が引き裂かれるように痛んだ。

「なにを飲まされたのかわからないのに、ひとりでいて体調が悪くなったらどうするんですか」

 私が食い下がると、彼は顔をそらしたまま低くうなる。

「頼む。わかってくれ」
「いやです!」

 亮一さんの手を掴むと、彼の体がびくんと震えた。

 触れた肌が熱かった。
 呼吸も速くなっている。
 こんな状況の彼をひとりにしておけるわけがない。

 じっと亮一さんの横顔を見つめる。
 私に引く気がないとわかったのか、大きくため息をついた。

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