激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 私は息をのみ、覚悟を決めて口を開く。

「い、いいです」

 その声は緊張でうわずっていた。

「いいって……」
「亮一さんが楽になるなら、私を好きにしてください」

 震える指で帯締めをほどく。
 しゅるりと衣擦れの音がして金刺繍の帯が床に落ちた。
 腰ひもや伊達締め。ひとつひとつほどくたびに、亮一さんの視線が熱をおびる。

 けれど、彼は奥歯をかみしめ私から顔をそらした。

「日菜子、頼むからやめろ」
「私なんかじゃその気になれませんか? 私がまじめで退屈だから? 反応が悪いし、声も出さないし、人形を抱いているみたいでつまらないから?」

 涙を浮かべながら言うと、亮一さんの表情が変わった。

「……バカか。あんな男と俺を一緒にするな」

 苛立ちを隠さずそう吐き捨てる。

「亮一さん……」

 乱暴に抱き寄せられ唇を塞がれた。
 触れあった唇も舌もめまいがするほど熱かった。

 必死に彼のキスを受け止める。
 容赦のない官能的なキスに、頭の芯が焼き切れる。

 唇が離れ息を吐き出すと、彼は私を横抱きにして寝室へ向かう。

 開いたドアの隙間から、廊下の光が漏れていた。
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