激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 遅く帰って来た亮一さんに軽めの夕食を準備していると、彼がたずねてきた。

「はい。一日目はここのゲストルームに泊まって、二日目からはあちこち観光するみたいです」
「彰のやつ、久しぶりに日菜子に会えるのを楽しみにしているだろうな」

 苦笑しながらうなずく。

あの過保護な兄のことだ。
きっとワシントンでの生活をあれこれ聞きたがるんだろうな。

「亮一さんはお仕事忙しいみたいですけど、大丈夫ですか?」

 年明けから予定されている通商交渉の準備が難航しているのか、ここのところ彼の帰りが遅かった。

いろいろな関係者と会っているらしく、外で食事をとることも多い。

「もう少しで落ち着く予定だから、問題ない」
「無理はしないでくださいね」

 そう声をかけると亮一さんは「ありがとう」と微笑んだ。



 
 翌日の午後。

 兄と早苗さんをもてなすための食材をそろえようと、ひとりで買い物に出かけた。

 外に出たとたん冷たい風に吹かれた。首をすくめマフラーに顔をうずめながらバス停へと向かう。

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