激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 亮一さんと私の間には、未だにぎこちない空気が流れていた。

 ふたりでこのツリーを飾りつけて、兄と早苗さんを迎える準備をして、少しでも前の雰囲気に戻れたらいいな。

 兄と早苗さんが好きそうなワインやチーズを選び、チキンとスペアリブも買う。

 今日の夜に下準備をして、明日オーブンで焼こう。
 あとは野菜とフルーツと……。

 いろいろ見ているうちに、カートはいっぱいになってしまった。

 帰りはタクシーを使ったほうがよさそうだ。

 支払いを済ませタクシーを呼ぼうとスマホを取り出すと、亮一さんから電話がかかって来た。

「もしもし」とスマホを耳に当てる。

『今出先か?』とたずねられた。私の声と一緒に街の喧騒も聞こえたんだろう。

「はい。明日兄と早苗さんが来るので、食材を買おうと思ってスーパーに」
『大荷物になっただろ。大丈夫か?』
「バスは無理そうなので、タクシーを使って帰ります」

 電話の向こうの亮一さんが、『それがいいな』と笑った。
 その声の柔らかさに、胸がきゅんと詰まる。

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