激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「あの、木製のかわいいクリスマスツリーを買ったんです。今日亮一さんと一緒に飾りつけられたらいいなと思って……」

 私が切り出すと、申し訳なさそうに謝られた。

『悪い。今日は用があって、帰れそうにないんだ』
「泊りでお仕事ですか?」
『あぁ。明日、彰たちが来るまでにはなんとか帰る』
「そうですか……」

 沈んだ声で相づちをうつと、亮一さんは『悪い』と謝罪を繰り返す。

『これが片付けば、時間ができる。だから……』
「大丈夫です。亮一さんは大切なお仕事をしているんですから、気にしないでください」
『ありがとう日菜子。愛してるよ』

 亮一さんは優しくささやいて電話を切った。

 うれしいはずの言葉は、とても残酷に響いた。

 やってきたタクシーに乗り込み、ぼんやりと外を眺める。

 彼が好きなのは怜奈さんなのに、契約結婚を続けるために私に愛してると言ってくれる。
 こんな偽りだらけの結婚生活に、意味があるんだろうか……。

 そんなことを考えていると信号が赤になり車が止まった。

 豪華なホテルの前にキャメルのコートを着た長身の男性を見つけ、思わず身を乗り出した。

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