激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「そんなわけないだろ。ほかに好きな女性がいるなら、日菜子に結婚を持ち掛けたりしない」
「でも、昨日彼女と一緒にいたじゃないですか」
「大使公邸でのことを問いただしていただけだ」

 彼の言葉が信じられなくて、眉をひそめる。

「日米通商交渉の下準備をしている話はしたよな? アメリカ国内にその交渉の邪魔をしようとする経済団体があった。君がミシェルと出会うきっかけを作ってくれたおかげで、日本側が優位に話を進められる形になったが」

 亮一さんはまっすぐに私を見ながら説明を続けた。

「怜奈はその団体から賄賂をもらい日本側のスキャンダルをでっちあげようとしたんだ」
「スキャンダルって……」
「大使公邸で開かれたパーティー中に、日本の外交官がアメリカの女性官僚を凌辱したなんて、ゴシップ誌が大よろこびしそうなネタだろ。そんな噂が広がれば、日本大使館の印象は一気に悪くなる」
「それが目的で怜奈さんは亮一さんに薬を?」
「あぁ。その証拠を集めるために浜辺とふたりで奔走していた。ようやく証拠がそろって彼女を吐かせた。そのおかげで黒幕の経済団体にも裏から手を回して圧力をかけることができた」

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