激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
2契約結婚の提案
■契約結婚の提案
五歳年上の瀬名亮一さんは、私の憧れの人だった。
彼は兄の高校時代からの友人で、初めて会ったのは私が中学にあがったばかりのころ。
高校時代から兄は勉強よりもスポーツが好きで、友人が多かった。
対する亮一さんはスポーツも勉強もでき、文武両道、品行方正、眉目秀麗なんて賛辞の言葉が似合う完璧な人だった。
学校内どころか他校の生徒も彼を知っている、王子的存在だったそうだ。
テスト前になるといつも兄は亮一さんを家に呼び、勉強を教えてもらっていた。
中学生だった私には、高校のブレザーの制服を着た亮一さんはすごく大人でかっこよく見えた。
長いまつげと通った鼻筋。
きゅっと引き結ばれた唇に、精悍な輪郭。
サラサラの黒髪や長い指や落ち着いた柔らかい声。
黙っていると近寄りがたく感じるのに、実際の彼はとても優しかった。
私がこっそり兄の部屋をのぞくと、いつも気づいて笑いかけてくれた。
『日菜子ちゃん、おいで』と手招きしてくれる彼を見ると、うれしくて胸が高鳴った。