激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 その愛の深さを知って胸が震える。

「恋人に裏切られて泣く日菜子を見て、もう無理だと思ったんだ。ただ見守るだけじゃなく、二度と他の男に傷つけられないように、すべてを奪って俺だけのものにしたいと思った」
「じゃあ、どうして契約結婚をしようなんて言ったんですか? 最初から好きだって言ってくれたらよかったのに」
「恋人に振られたばかりの君に『好きだ。結婚してくれ』と言ったら、こうやってアメリカに来てくれたか?」

 逆に問いかけられ返答に困る。

「慎重でまじめな君を正攻法で口説いても簡単にはうなずいてくれないだろ。それじゃなくても俺はアメリカ赴任中で口説くには時間がなさすぎた。いろいろ考えて、契約結婚を持ち掛けるのが最善の策だと判断した」
「最善の策って、計算高すぎ……」
「日菜子は俺を優しくて紳士的な男だと思っているかもしれないけど、実際の俺は狡猾で悪い男だよ」

 そう言ってこちらを見下ろす。
 その視線にベッドで見せた強引な一面が垣間見えて心臓が跳ねた。

「いつも私に見せてくれる優しい顔は嘘なんですか?」
「嘘なわけじゃない」
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