激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 浜辺さんに話を振られた亮一さんは、「口説いても無駄だとはっきり態度で示したほうが親切だろ」と当然のように言う。

 いつも優しくて穏やかな亮一さんが……。と驚くけれど、彼にとってはそれが通常の対応で、私だけに特別に甘いらしい。

 こちらをうかがっている女性職員と目が合い会釈をすると、彼女たちは跳び上がり会釈を返してくれた。
 そのあと頭を突き合わせ、なにやら楽しそうに盛り上がる。

「ちなみに日菜子さんは彼女たちの中で、難攻不落の瀬名さんを陥落させた勇者と呼ばれていますよ」
「勇者……」

 知らないうちに自分とはかけ離れたイメージを持たれているなんて。
 どう反応していいのかわからなくて困る。

「日菜子が勇者なら、陥落した俺は魔王かなにかか」と亮一さんが不服そうな顔をした。
「たしかに。仕事中の瀬名さんはめちゃくちゃ怖いから、まさに魔王って感じですね」
「浜辺……」

 亮一さんの視線がすっと冷たくなる。

 睨まれた浜辺さんは「魔王が怖い。日菜子さん助けて!」と私の肩を掴み亮一さんから隠れた。

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