激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「外交はこれからもずっと続く。一度のひとり勝ちで相手の恨みをかうより、今回は優劣をつけず恩を売ったほうがあとあと日本の利益になると判断しただけだ」

 さすが亮一さん、相変わらず計算高い。
 自分の手柄よりも先のことを見通せる冷静さがかっこいい。

「その外交手腕をかわれて、アメリカの名だたる大企業からオファーを受けたんですよ。対外折衝のプロとしてぜひうちで働いてくれって。しかも一社じゃなく何社も」
「すごい……」

 亮一さんが有能なのは知っていたけれど、アメリカの有名企業から声がかかるほどなんて……。

「瀬名さん、来年あたりには外交官じゃなく大手企業の役員になってるかもしれませんね」

 そんな話をしていると、浜辺さんを呼ぶ声がした。

「あ、僕呼ばれたので行きますね」

 明るく手を振って駆けだした彼の背中を見送る。

「相変わらずあいつはさわがしいな」

 顔をしかめる亮一さんを見て、くすくすと笑った。

「亮一さん、アメリカの企業からスカウトされていたんですね」
「あぁ。断ったけどな」
「民間企業には興味がないんですか?」
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