激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 そんな私たちを支えてくれたのは、外交官になるという夢をかなえ、当時外務省に入省一年目だった亮一さんだった。

 彼は総合職、いわゆるキャリア外交官として霞が関にある本省で実務をこなしながら語学研修を受けていた。

 そんな多忙な中、現地の在外公館とのやりとりを一手に引き受け私たち兄妹を助けてくれた。

『大丈夫。俺がそばにいるから』

 両親を失ったショックのあまり涙すら流せなかった私に、彼はそう言って隣にいてくれた。
 すぐそばに人のぬくもりがある。それだけでものすごく安心できた。

 彼に大きな手で頭を優しくなでられ、私はようやく泣くことができた。

 悲しみを吐き出すように声を上げて泣き続ける私を、亮一さんはしっかりと抱きしめてくれた。

 私たち兄妹がこうやって立ち直れたのは、亮一さんのおかげだ。

 ただの友人とその妹にここまでしてくれるなんて。
 本当に優しくて面倒見のいい人だと思う。

 そんな亮一さんに憧れ、私も外交官になりたいと思っていたけれど、両親を亡くしたショックもあり第一志望の大学に落ちた。



 そして私は夢をあきらめてしまった……。








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