激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「――日菜子ちゃん」

 柔らかな声で名前を呼ばれ、眠りから覚めた。

 体を起こそうとしたけれど、目を開けるとまぶしくて光から逃げるようにシーツにもぐる。

 まぶたが重たい。もう少し寝ていたい。
 そう思いながらベッドの中で丸くなる。

 そんな私の頭上から、くすくすと笑う声が聞こえた。
 シーツ越しに私の頭をそっとなでる。

「もうすぐ朝食が届くから、そろそろ起きようか」

 あれ、この声は……。

「亮一さん……?」

 くぐもった声でたずねるとゆっくりとシーツをめくられた。
 整った顔が私をのぞきこみ優しく微笑む。

 やっぱり亮一さんだ。でも、どうして亮一さんがここに?

「またお兄ちゃんにテストの勉強を教えてって頼まれたんですか?」

 図々しい兄は、テストのたびに亮一さんを家に呼び勉強を教えてもらっていた。

『亮一さんだって、自分のテスト勉強があるんだから迷惑だよ』と私が注意しても、『亮一と俺は親友だから問題ない』と謎の持論を展開して胸を張っていた。

 きっとまた、強引に勉強を教えてって頼まれちゃったんだろうな。
< 24 / 231 >

この作品をシェア

pagetop