激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「おしゃれをしているから、デートの約束でもあったのかなと思って」
「あ、ええと。その……」

 今日の私は普段よりもちょっとおしゃれをしていた。

 綺麗めのワンピースに小さなダイヤのピアス。
 いつもはひとつにまとめているセミロングの髪も、軽く巻いて下ろしていた。

 部長の言う通り、仕事のあとでデートをする予定だったから。

 言い当てられて言葉に詰まると、部長が「やっぱり」と申し訳なさそうに眉を下げた。

「頼んだ私が言うことじゃないけど、デートの約束があるのに残業を引き受けてくれるなんて、早川さんは本当にお人よしだな」
「そんな、お仕事ですから」
「でも、野口さんにはそっけなく断られたよ」

 部長は最初、野口さんという正社員の女の子に残業をお願いしていた。
 けれど彼女に『今日は無理です』と断られ、困っていたので私が引き受けたのだ。

 税関への書類の提出が遅れれば輸入が滞り、取引先に迷惑がかかってしまう。
 重要な仕事を優先するのは当然だと思ったから。

「悪いね。早川さんの恋人は営業の内藤だったよな。あいつにも私から謝っておくよ」

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