激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「でも、私が妻になる必要があるんですか?」
「在外公館に赴任していると人脈を広げ情報を得るためにさまざまな人たちと交流する必要がある。欧米だとパートナー同伴で招待されることも多い」
「たしかに、海外のお付き合いはそんなイメージがありますよね。でも人脈ってそんなに大切なんですか?」

 私の疑問に亮一さんは「もちろん」と微笑む。

「日本大使館としてアメリカ政府に要望を出しても聞き入れてもらえないことは多い。けれど、アメリカの経済界や法曹界に影響力のある人物からの提案という形をとれば、こちらの思い通りに話が進むこともある」
「裏工作ですね」
「人聞きが悪いと言いたいところだけど、その通りだ。国益を守るためなら、使えるものはすべて使う」

 外交官という仕事の難しさを思い知る。
 各国の政府関係者や要人を相手に、交渉相手の力量や他国がどう出るかを予測して最善の手段を考えなければならないんだ。

「独り身だとその人脈を作るチャンスが限られる。そのせいもあって、早く結婚しろとあちこちから縁談を持ち込まれて困っているんだ」

 亮一さんはどうしたものかと悩むようにため息をつく。

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