激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「不安ならきちんと契約書を作ろう。別れるときは財産分与として相応の金額を渡す。帰国後の生活の心配はしなくていい」
「わざわざ契約書なんて作らなくてもいいですけど……。私と離婚したらまた縁談が持ち込まれて困るんじゃ?」
「そのときは、別れた妻のことを愛していてほかの女性との結婚は考えられないと断るよ」

 たしかに亮一さんの提案は筋が通っているしお互いにメリットがある。
 むしろこれ以上ない最善の策に思えた。

 亮一さんが真剣なまなざしをこちらに向ける。
 綺麗な黒い瞳に見つめられ、吸い込まれそうになる。

「日菜子ちゃん。俺と結婚しよう」

 甘い声でささやかれ、頬が熱を持っていく。
 彼の端正な顔に見とれそうになって、はっとした。

 落ち着け、落ち着け。
 これはただの契約結婚なんだから。
 自分に言い聞かせ、大きく息を吐いてから答える。

「わ、わかりました。お互いの利害のための契約結婚、お受けします」

 私がそう言うと、亮一さんは満足したように微笑んだ。

「よし。じゃあ食事を終えたら買い物に行こうか。日菜子ちゃんの着替えを買いたいし、準備しなきゃいけないものもあるし」
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