激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
3嘘だらけのご挨拶
■嘘だらけのご挨拶
「亮一と日菜子が結婚……っ? しかも一カ月後に日菜子をアメリカに連れていくだと?」
家中に兄の大きな声が響いた。
あまりの音圧に、リビングの隅にある仏壇のお線香の煙がゆらいだ気がした。
びくっと肩をすくめた私の隣で、亮一さんはまったく動じず背筋をのばしたままうなずく。
「あぁ。今回は彰の許しを得て日菜子ちゃんと籍を入れるために日本に帰って来た」
本当はご両親からお見合いしろと命じられて帰国したのに、亮一さんはさらりと嘘をつく。
さすが外交官。
顔色ひとつ変えずに嘘をつくなんて。
腹の内を見せずに交渉することに慣れているんだろう。
契約結婚すると決めてから、亮一さんの行動は早かった。
私のスマホから兄に連絡を入れ、これから結婚の挨拶に行くと宣言したのだ。
それからふたりで下準備をして、わが家へとやって来た。
今リビングには亮一さんと私、テーブルを挟んで兄と恋人の早苗さんが向かい合って座っていた。
私の家は両親が生きていたころから住んでいる一軒家だ。