激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 こんなに素敵な亮一さんが私を口説き続けるなんてありえないのに、平然と言ってのける彼は心臓が強すぎる。

「それじゃあ、付き合ったといってもほとんど会えなかっただろ。そんなの恋人といえるのか」
「無理やりスケジュールを調整して、短期間だけ帰国してデートをしたりしていたよ。な、日菜子ちゃん」

 話を振られた私は、慌てて「そうなの」と首を縦に振る。

「亮一さんは忙しいのに私のために会いに来てくれたし、頻繁に電話もしてくれたし。遠距離だったけど、ちゃんとお付き合いしてたよ」

 たどたどしく言ったけれど、兄の顔には納得できないと書いてあった。

 やっぱりこの設定、無理があるんじゃ……。

 不安になりかけたとき、「まぁまぁ、おめでたい話なんだからいいじゃない!」と明るい声が響いた。

 声の主は兄の恋人の早苗さんだ。
 ショートカットで快活な印象の彼女は、にこにこ笑いながらその場の空気を和ませてくれる。

「ごめんね、日菜子ちゃん。彰が文句ばっかり言って。かわいい妹をとられるのが寂しくてすねてるのよ」
「すねてるわけじゃない! ただ俺は、急に結婚なんて怪しいと思って……」
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