激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 そして彼はお店のスタッフに、『おすすめの婚約指輪をいくつか、値段がわからないようにして持ってきてほしい』とお願いした。

 不思議に思いながら案内されたソファに座り待っていると、美しい指輪が並んだトレイが差し出された。
 どれも驚くほど綺麗なダイヤがついていた。

 その輝きを見て息をのむ私に、亮一さんは『この中から好きなのを選んでくれ』と平然と言った。

『こんな高級なお店で、値段も見ずに選ぶなんて無理です……!』

 驚いた私はお店のスタッフには聞こえないように、小声で亮一さんに抗議する。

 身をすくませていると、彼は『わかった』とうなずいた。

『日菜子ちゃんが選べないなら、一番高価な婚約指輪を買おう』

 そう宣言され、スタッフの女性は顔を輝かせ、私は一気に青ざめた。



 そんなやりとりがあり、なんとか選んだ婚約指輪が私の左手の薬指にはまっている。

 ちなみに、スマートな彼が支払いの様子を私に見せるはずもなく、この指輪の金額はわからないままだ。

「あのブランドでこのダイヤの大きさなら、七桁はくだらないわね」

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