激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
4海を隔てた誕生日
■海を隔てた誕生日
私が出社すると、社内の空気がわずかに変わった。
同僚たちが一瞬会話をやめ、私のほうを見る。
それだけで金曜の出来事を知られているんだとわかった。
好機を隠さず私のことを観察する人や、同情の目で見る人。
そんな視線を向けられ傷つくかと思ったけれど、私は意外と平常心でいられた。
大きく息を吐き出してから、明るい声で挨拶をして席に着く。
背筋を伸ばし前を向きいつもどおり仕事をする。
幸い康介は今日から海外に出張だった。
帰ってくるのは今週末。それまでは顔を見ずにすむ。
野口さんをはじめとした後輩たちは、私のほうを見ながらひそひそと話をしたり笑い声をあげたりしていたけれど、それ以外の人たちは通常通り接してくれた。
私はほっと胸をなでおろす。
昼休みになり社内にあるカフェに向かって歩いていると、同僚の水田聡美が「一緒に食べよう」と声をかけてくれた。
彼女は私と同い年の契約社員だ。
入社してから知り合ったけれど、話しやすくて明るい彼女とは気が合い、今ではプライベートでも一緒に遊ぶ友人でもある。