激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 彼と契約結婚することを決め、家族に挨拶をして入籍をして……。
 そんな怒涛の二日間を過ごしたせいか、康介の浮気がものすごく前の出来事のように感じる。

「強がってない?」
「強がってない」
「本当にー?」

 聡美は疑いの目で私を見つめる。

 しばらく私の表情を観察したあと、「たしかに落ち込んでなさそうだね」と納得したようにうなずいた。

「仕事をやめてからはどうするの?」
「ええと、一カ月後にワシントンに行こうと思ってて……」
「え、ワシントンってアメリカの? まさか、自暴自棄になって海外を放浪する気?」
「放浪って」

 苦笑いしながら首を横に振る。
 突然アメリカに移住するなんて言ったら驚くのも無理もない。

 少し迷ってから、聡美になら話してもいいかなと思い切って事情を説明する。

「知り合いの外交官と契約結婚?」
「うん。お互いの利害が一致して」

 そうなった経緯を話すと、聡美は表情を緩めた。

「急なことで驚いたけど、そういう選択もありなのかもね」
「え? ありかな」

 好きでもない相手と結婚なんてありえないと否定されるかと思ったのに。
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