極甘恋愛短編集

距離を置く

私みたいな汚い気持ちを持った子が聖也と一緒にいるなんて、最低なことかもしれない。


朝の廊下で感情が爆発してしまったあの子のほうが、よほどキレイな心を持っている。


そしてそういう子たちはきっとたくさんいて、聖也のことが好きなのかもしれない。


「難しい顔してどうしたの?」


昼休憩が終わった時、若葉が心配そうな顔をして声をかけてきた。


さっきまで一緒にお弁当を食べていたのだけれど、ふとひとりになると今朝のことを思い出してしまう。


「ううん、なんでもないよ」


慌てて笑顔を浮かべてみても仲のいい若葉にはすぐに嘘だとバレてしまう。


「なにかあった? 聖也くん、告白は断ったんでしょう?」


どうして聖也のことで悩んでいるとわかってしまうんだろう。


私はそんなにわかりやすく顔に出ているだろうか。


両手で頬を包み込んで眉を寄せたり、笑顔になったりしてみる。


「今度はひとり百面相?」


「そ、そうじゃないけどさ。私ってわかりやすい顔してるかなぁと思って」


「そうだね。私達親友だしね」


だからわかるんだよと言われるとなんとなく嬉しくなってしまう。
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