極甘恋愛短編集
どうしよう。


コンビニで猫缶でも買って来たほうがよかったかな。


食欲旺盛な子猫を見て考えごとをしていたせいで、近くに人が立っていることに気が付かなかった。


ガサッと草を踏みしめる音で気がついて振り向く。


そこに立っていたのは背の高い氷王子だった。


氷王子は教室内で見るのと同じように無表情でこちらを見下ろしている。


私は咄嗟に立ち上がり、数歩後ずさりをしていた。


勝手に子猫にミルクをやったりしたから怒っているかもしれない。


心臓がドキドキと高鳴り始める。


「えっと、あの……これはっ」


どうにか事情を説明しようとするのだけれど、緊張してしまってうまく言葉が出てこない。


このままじゃ本当に怒られちゃう!


ギュッと目を閉じて覚悟したそのときだった。


「ありがとう」


穏やかな声が聞こえてきてそっと目を開けた。
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