極甘恋愛短編集
氷王子は子猫の前でしゃがみ込み、その喉を撫でていた。


子猫は氷王子にされるがままにゴロゴロと喉を鳴らして目を細めている。


「ミルクをやってくれたんだろう?」


「う、うん」


私はどぎまぎしながら返事をする。


氷王子とまともに会話をするのはこれが初めてだった。


氷王子は学校では見せないような穏やかな笑みを浮かべて子猫とたわむている。


その姿に私の心臓はドキドキしっぱなした。


「猫、好きなんだ?」


「あぁ。動物は全般好き」


「そうなんだ」


子猫と触れ合っているときの氷王子は氷の要素が抜け落ちている。


私の緊張感もだんだん解けてきて、隣に座り込んで一緒に猫をなでたりした。


「私のこと覚えてる?」


「もちろん。平井さんだろ?」
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