極甘恋愛短編集
佑美はニコリと笑うと「たまにはひとりで食べるのもいいよね」と答えた。


それはきっと私がまだどこのグループにも入れていないからで、それを直接口に出すことなく伝えてくる佑美の優しさに胸の奥が暖かくなっていく。


隣の席が佑美でよかった。


佑美を通して色々なクラスメートと会話できるようになってきた頃、教室の通路を歩いていると前から来た生徒にぶつかってしまった。


私はできるだけよけて歩いていたつもりだったけれど、相手が中央をずんずんと進んでくるので避けることができなかったのだ。


「ご、ごめんなさい!」


自分が悪いと思っていなくてもぶつかった瞬間謝っていた。


強い衝撃が体にあって、思わずよろめく。


対して相手は背が高く、私とぶつかってもびくともしていない。


恐る恐る顔を上げて確認してみると、そこには恐ろしく整った美形がいた。


入学初日から気にはなっていたけれどまだ会話をしたことはない。


クラスメートの西原直一くんだ。


西原くんを見るために上級生たちがA組に集まってくるくらい、顔がいい。


だけど細められた目はこちらを鋭く睨みつけているように見えて、どうしても萎縮してしまう。


クラスメートが西原くんに挨拶しているのを見たことがあるけれど、彼は軽く頷くだけで返事もしなかった。


とにかく冷たくて、怖いイメージを持っている。
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