極甘恋愛短編集
でも、じゃあこれから何を言えばいいのか……。


なにを言っても今の出来事を消し去ることはできないし、挽回できそうにない。


言葉が出てこなくて下唇を噛み締めた。


子猫はミルクを飲み終えて西原くんの足元にすり寄っている。


あぁ……。


子猫はいいな。


素直に甘えられることができて。


私も子猫になることができたら、あんな風に西原くんになでてもらうこともできるのに。


「ありがとう」


子猫の顎を指先でなでながら西原くんは言った。


その声は思っていたよりも穏やかで、私はようやく顔をあげることができた。


西原くんは頬を緩めて子猫をなでている。


「笑顔が素敵だなんて、久しぶりに言われた。嬉しかった」


西原くんはそう言うと照れ笑いを浮かべる。


さっきとは違う笑顔だけれど、やっぱり人を引きつけるような魅力的なもので間違いがなかった。


「でも、無理なんだ」
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