極甘恋愛短編集
西原くんの冷めた声に背筋がゾッと寒くなる。


家でホラー映画を見てトイレに行くことができなくなった、子供の頃を思い出した。


「見た目で近づいてきて、勝手に俺がどういう人間なのか決めつけて、理想と違ったらすぐに突き放す」


西原くんは何度そんな目に遭ってきたんだろう。


子猫を見つめながらも、彼は過去の出来事をキツクにらみつけているように見えた。


するどい眼光の中には西原くんの悲しみが隠れている。


「見た目だけで近づいて優しくしてくるなら、最初から来ないほうがいい。途中で投げ出すなんて最低だ」


自分にはそんなことをされた経験はない。


だけど、今目の前にいる子猫が西原くんのいったとおり途中で投げ出されたりしたら、どう感じるだろう?


無責任。


裏切り者。


そんな風に感じてしまうかもしれない。


それなら最初から近づいたりせずに、子猫が自力で生活できるように見守ったほうがずっといい。
< 39 / 129 >

この作品をシェア

pagetop