極甘恋愛短編集
しばらくは誰もいない空間が楽しいかもしれないけれど、きっとそれもすぐに飽きてしまうだろう。


だから少しでも一緒の時間を作ってあげたいと思っていた。


「よし、準備万端」


スーパーで買い物を済ませて、地図を手に歩き出す。


学校から歩いて15分。


私の家からもちょうど15くらいの場所にその家は建っていた。


母子家庭だというからもっとこじんまりとしたアパートを想像していたけれど、キレイな一軒家だ。


赤い屋根の可愛らしい家の前に立ち、表札を確認すると京野と書かれている。


どんな子が出てくるだろう?


小さな庭に植えられている色とりどりの花を見つめて、期待で胸をふくらませる。


友達になれるといいな。


そう思ってチャイムを鳴らす。


家の中からパタパタと足音が聞こえてきて、すぐに玄関が開いた。


「はい」


少し不安そうな声が聞こえてきたかと思うと、私は一瞬大きく目を見開いていた。


玄関先に出てきて私を見つめて、不安そうに首をかしげているその子は……。


「なにか用事ですか?」
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