極甘恋愛短編集
「目が覚めると窓の外は暗くなってて、リビングには泣いているお母さんがいて、お父さんはいなかった。外へ出て探したけれどいなくて、でも星空がとてもキレイだったから、僕は嬉しくなって家に駆け戻ったんだ、『お母さん、星空がキレイだよ』って伝えたくて。


だけどお母さんはそんなことじゃ笑顔にならなかった。僕が寝ている間にお父さんがいなくなったって聞かされて、すごく後悔した。僕が起きていればなにか違っていたかもしれない。僕が引き止めていれば、今でもお父さんは一緒に暮らしていたかもしれない」


一気に話して大きく息を吸い込む。


そして少し涙で滲んだ瞳をこちらへ向けて笑った。


その笑顔が健気で胸の奥がチクリと痛む。


徹には無理のない、無邪気な笑顔の方が似合っている。


「そっか……」


ようやく声を絞り出したけれど、やっぱりなにも言えなかった。


私には徹の気持ちがわからない。


同じ状況になった経験がないし、辛い気持ちを共有したくても軽いことはいいたくない。


「でも、今日は明日香ちゃんがいてくれた」


その言葉に心臓がドクンッとはねた。


徹は眠りながらも私の腕を掴んでいた。
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