極甘恋愛短編集
校舎裏が近づいてくると歩調を緩めて足音を消し、まるで泥棒にでもなった気分だった。
それでも好奇心に勝てず、佑美とふたりでそっと覗き込んでみた。
校舎裏にはフェンスがあり、その手前に細長い花壇が続いている。
これは綺麗な校舎をつくるための花壇ではなく、裏からの侵入者を防ぐためのもので、花壇に植えられているのはトゲのある植物だけだと佑美が教えてくれた。
その花壇の前に立つ男女の姿が見えた。
男子はこちらに背を向けているけれどとても身長が高い。
女子は顔を真赤にしてうつむいているけれど、同じクラスの田中さんだとわかった。
教室後方で恋愛話しに花を咲かせていたひとりだ。
と、いうことは相手の男子生徒は……。
「無理」
そんな冷たい声が聞こえてきてこちらの体まで氷つく。
真っ赤だった田中さんの顔はみるみる青ざめていき、身動きすら取れなくなってしまった。
男子生徒はこの場の空気すらもすべて氷つかせて、田中さんの横を通り過ぎてやがて見えなくなってしまった。
ひとり残された田中さんはしばらく呆然としてその場に立っていたが、やがて意識が戻ったようにその場に両膝をついて泣き始めたのだった。
それでも好奇心に勝てず、佑美とふたりでそっと覗き込んでみた。
校舎裏にはフェンスがあり、その手前に細長い花壇が続いている。
これは綺麗な校舎をつくるための花壇ではなく、裏からの侵入者を防ぐためのもので、花壇に植えられているのはトゲのある植物だけだと佑美が教えてくれた。
その花壇の前に立つ男女の姿が見えた。
男子はこちらに背を向けているけれどとても身長が高い。
女子は顔を真赤にしてうつむいているけれど、同じクラスの田中さんだとわかった。
教室後方で恋愛話しに花を咲かせていたひとりだ。
と、いうことは相手の男子生徒は……。
「無理」
そんな冷たい声が聞こえてきてこちらの体まで氷つく。
真っ赤だった田中さんの顔はみるみる青ざめていき、身動きすら取れなくなってしまった。
男子生徒はこの場の空気すらもすべて氷つかせて、田中さんの横を通り過ぎてやがて見えなくなってしまった。
ひとり残された田中さんはしばらく呆然としてその場に立っていたが、やがて意識が戻ったようにその場に両膝をついて泣き始めたのだった。