極甘恋愛短編集
☆☆☆

徹の家でふたりでキッチンに立ってオムライスを作る。


徹は卵を割ることすらできなくて、ボールの中に卵のカラが入ってしまって泣いてしまいそうな顔をしている。


「カラが入っても大丈夫だよ。取ればいいんだから」


私はそう言って菜箸を器用に使ってボールの中から卵のカラを取り出した。


フライパンの中ではすでにケチャップのチキンライスができあがっている。


「僕本当になにもできなくて、ごめん」


落ち込んでいる徹の制服はキチンとアイロンがかけられていて、シワがない。


「シャツのアイロンは自分でしたの?」


卵を新しいフライパンで焼きながら聞くと、徹は小さく頷いた。


「すごいじゃん。キレイにできてるね」


「本当に!?」


さっきまで泣きそうだった顔が一瞬にして明るくなる。
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