囚われのシンデレラ【完結】
そうして追い払われてから15分くらい経った頃、店員さんと西園寺さんが私の元へと来た。
「まずはこちらの婚約指輪の方を、指にはめてみていただけますか?」
重厚な造りになっているトレーに載せられた2つの指輪に固まる。
「早く、手を出して」
西園寺さんに言われて、おそるおそる手を差し出した。
「素敵ですね。お似合いです」
婚約指輪と言われて指にはめたものは、シンプルなのに、たくさんのカットが施された大きなダイヤモンドが中央で輝いている指輪だった。
「こ、こんなに大きな石、私には――」
「そして、こちらは結婚指輪ですが、重ね付け出来るデザインになっているんです。単品でも両方合わせてでも、コーディネート出来ますよ」
おどおどとしている間に、結婚指輪もはめられていた。それは、リング全体を小粒のダイヤモンドで張り巡らされているデザインになっている。
「サイズもちょうどいいと思いますが、いかがでしょうか」
「はい、サイズはぴったりです。でも、あの――」
「いいですね。じゃあ、この2つをお願いします。このまま指にはめて帰りたいのですが、いいですか?」
「承知いたしました。では、ケースと鑑定書などを準備させていただきます」
私の言葉はどこにも挟ませてもらえないままで、指に指輪だけが残った。
車に戻るとすぐに西園寺さんにお礼を言った。
「あんなに高価なもの、ありがとうございます」
「別に、君のために贈ったものじゃない。俺の妻として相応のものをしてもらうために買ったものだ」
「そ、そうだとしても、ありがとうございます」
ハンドルを握る西園寺さんは前を見たまま、私の顔をちらりとも見ない。
「実家では、君は招かれざる客だ。温かい歓迎はないだろう。それは覚悟しておいてくれ」
「はい。わかっています」
膝の上の手でぎゅっと握り拳を作る。そこに輝くダイヤモンドを見つめた。