囚われのシンデレラ【完結】
「だ、だめ、です。私……っ」
身体が勝手に震えて揺れてしまいそうになるのを、身体中に力を込めて懸命に抑える。無意味だと分かりつつ、手のひらで口元を押さえた。
「……腰、揺れてる。気持ちいい?」
「ご、ごめんなさい」
一方的に与え続けられる甘すぎる愛撫に、身体を捩らせ唇を噛み締める。
「いいんだ。我慢するな」
「あ、あっ、でも――んっ」
身悶えて快感をやり過ごそうとしたのに、片方の足を持ち上げられて膝に唇が触れて、一瞬にして肌を波立たせる。
目を伏せたその表情が、整った顔を妖艶にして。西園寺さんが、私の露になった脚を舐める姿を視界に入れれば、それがまた身体を火照らせる。
そんな風に、恋人みたいに触れないで。
びくびくと震えてしまう身体が恥ずかしくて、激しく頭を振る。
「――あずさは何も悪くない。だから、もっと感じて」
乱れる呼吸と小刻みに動く身体、もう、どこにも逃せない。身体中が西園寺さんの体温で満たされて、快感から逃げられない。
「全部、俺が悪いんだ」
「――あっ、もう、私っ」
欲しくて。
西園寺さんの全部を欲しいと身体がいやらしくすり寄って行く。
なんて淫らな身体なんだろう。身体だけでも欲しいと求めて、縋って。
こんなに心は哀しいのに、どうしようもないほどに感じている。
「西園寺さん……っ」
白いシャツのはだけたその胸に手を伸ばしたのと同時に抱き寄せられて。西園寺さんの脚に跨るように向き合って座らされた。
熱く張り詰めたものが、ゆっくりと押し入って行く。恥ずかしいほどに濡れてとろとろになっているそこを少しの隙間もなく埋めつくしていく。
最後に会った夜以来。他に誰も受け入れたことのないそこに、すべてが飛んで行ってしまいそうなほどの快感が突き抜ける。
「あっ、あぁぁ……っ」
私の乱れた声がみっともなく静かな廊下に響く。
「あずさ、力を抜け。きつくて、すぐにイってしまう……っ」
「ごめ、なさい。でも――あっ、」
どうしたらいいのか分からない。
じりじりと増していく甘く痺れる刺激が、身体を支配してコントロールが効かない。
私の中に確かにいる。
そのことに訳も分からず涙が込み上げて仕方ない。
快感と同じだけの感情が、私を苦しくさせる。
好き――。
「あ、ずさ――」
「――」
溢れてこぼれるその感情は、どこにも行けない。
だから、目の前の西園寺さんの身体にしがみつく。滑り落ちて行くシャツから姿を現したその広い背中に、肩に、すがりつく。
苦しくなると分かっているのに、どうして気付いてしまうんだろう。
こんなにも好きだなんて。
でも、考えないようにしていただけで当然の結末なのかもしれない。
結婚して一緒に暮らすことを選んだ時点で、こうなることは予想出来たはずだ。
あんなに好きになった人なんだから、また好きになってしまうに決まっているんだと。