囚われのシンデレラ【完結】
落ち着けるために、息を吐く。そして西園寺さんの顔を見た。
「家で西園寺さんのスマホを見つけて、どうしたらいいかを聞こうと思って会社の方に電話をしたんです。そうしたら西園寺さんがいなかったので、届けることにしました」
「……そうだったのか。スマホがないことに気づいたのが会合の開始直前だったから、昼にでも君に電話しようと思っていたんだ」
会合……?
「来客中だと聞きました」
「来客? いや、会合があって外出していた」
斎藤さんは、西園寺さんはすぐに戻ると言った。どうしてそんな嘘をついたのか。
私を引き留めて、話をするため――。
「西園寺さんは私との結婚を誰にも公表していないと、斎藤さんから聞きました。それはやっぱり、私では対外的に西園寺さんには釣り合わないからですよね?」
「そう、遥人に言われたんだな」
「それと、結婚後も西園寺さんが他の女性と会っているということも聞きました。私がそれをどうこう言える立場ではないのは分かっています」
そう言いながらも苦しくなってしまう、聞き分けのない心が嫌になる。
「でも、もしかしかたらそれは、西園寺さんが話していた縁談のお相手ではないですか? その縁談を断るために私と結婚したのに、私では全然役に立てていなかったんですか? それとも……」
本当は、その人と結婚するつもりでいたの――?
きちんと話そうと思っていたのに、どうしてもみっともない感情が前に出て来ようとする。