囚われのシンデレラ【完結】
言われた通り、西園寺さんの首に顔を埋めるようにしてしっかりとしがみつく。
「西園寺さん、私、今日、よっぱらってるの」
「それは、見れば分かるよ」
久しぶりに感じる西園寺さんの体温と匂い。
それはとても大人の匂いで、ただでさえ酔っているのにさらに思考をクラクラとさせる。低い声が、いつもよりずっと近くから聞こえる。
「怒って、ますか?」
「……いや。心配はしてるけど、怒ってはいない」
「ほんと……?」
ばっと顔を上げて、西園寺さんの顔を覗き込む。
「お、おいっ、急に動くな」
「重いなら、おります……っ」
「だから、動くなと言っている。じっとしていれば、それでいいから」
いつもは凛として真っ直ぐに伸びる眉が、困ったように動く。
西園寺さんの腕が私の身体をがっちりと固定させるから、余計にその胸に引き寄せられた。
ずっと、このままでいられたらいいのにな――。
こんなにも近くで西園寺さんに触れられて嬉しいのに。嬉しい分だけ、同時に切なくなって苦しくなる。
アルコールは感情の振れ幅を大きくして、心の中が忙しない。ふわふわとして忘れていた苦しさが呼び起こされて。チクチクと刺激して、そこから痛みが響くみたいに身体中に広がって行く。