囚われのシンデレラ【完結】
西園寺さんのお友だちが、こちらへと走って来る。
「何も言わずにいなくなったと思ったら、この子に会いに来てたのか――」
西園寺さんの隣に座ると、そんなことを言い出した。少し不機嫌そうになる西園寺さんに構わず、私に笑顔を向ける。
「突然ごめんね。改めまして、僕は斎藤と言います。君は?」
「進藤です、進藤あずさです」
またも自己紹介をすることになった。
「よろしくね、あずさちゃん」
「は、はい。よろしくお願いします」
やっぱり、人当たりの良さは想像通りだ。
「ホント、困るよね。友人置き去りにして女の子のところに行っちゃうとかさ。いつから、そんなチャラい男になったんだ?」
「変な言い方はやめろ。そういうんじゃない」
斎藤さんの言葉に、西園寺さんが鋭い視線で遮る。
「ただ、話していただけだ」
「そうなの……?」
今度は、斎藤さんの視線が私の方に向けられたので、ぶんぶんと頷いた。
「だったら尚更、僕も呼んでくれればいいじゃないか。冷たい奴だな。僕と佳孝はね、もうかれこれ20年くらいの付き合いなの。僕の父が佳孝の父親にずっと仕えていてね。家族ぐるみの付き合いなんだ」
「そうなんですか……」
そうだった。西園寺さんは、ここのホテルの御曹司。その事実がすっかり頭から消えてしまっていた。