囚われのシンデレラ【完結】
一人になって、ベッドに再び横たわる。
私の身体を覆う掛布団を思わず抱きしめた。
昔みたいに、何度も「好きだ」って言ってくれた――。
全部夢みたいで、泣きたくなった。
7年前の別れ。私は柊ちゃんがいたのに西園寺さんと付き合って、そして柊ちゃんを選んだと西園寺さんは理解しているのだ。
それなのに、私を好きだと言ってくれた西園寺さんの気持ちが、私の胸を締め付けてどうしようもない。
どんな気持ちで、ここで私と暮らしてくれていたんだろう――。
そんな西園寺さんの心境を思うと、居てもたってもいられなくなる。
早く誤解を解きたい。私には西園寺さんしかいなかったって、もう一度言いたい。
ぐるりと部屋を見回す。
掃除をする時には入るけれど、してはいけないことをしている気分になって、いつもさっさと出ていた。
シンプルな部屋に、大きなデスクと大きな書棚。そして、このベッドと一人掛けのソファが置かれている。
これまで、お互い、この家で同じ時間を過ごすような関係ではなかった。西園寺さんはこの部屋で一人の時間を過ごしていた。
これからは、もっと同じ時間を過ごせるだろうか。
ベッドサイドの置時計をちらりと見ると、6時を指していた。
こんなに早く出勤したんだ。
そうだ。昨日、西園寺さんは仕事の途中でラウンジに来てくれた。やり残した仕事をしなければならないのかもしれない。
公香さんのことが頭を掠める。
胸に深く捻り込んで来るような痛みに、ぎゅっと目を閉じる。
でも。私は、私の想いを貫くまでだ――。
そう自分に言い聞かせる。
ベッドの、西園寺さんがいた場所に顔を埋めた。微かに、西園寺さんの残り香がある。
たくさんの余韻が残っているこの身体を抱きしめる。
昨日までより、時間の流れが遅く感じる。西園寺さんを待つ時間が、果てしなく感じた。
ようやく訪れた夜に、西園寺さんからメッセージが届いた。
【ごめん。今日はかなり遅くなる。先に休んでいてくれ】
スマホを手にして、じっとその文字を見つめる。
ただ、仕事が立て込んでいるだけ。
ただ、それだけ。
そう思うのに、胸の奥がざわざわとする。
掴みきれない何かを感じて、分かりもしないものに恐れを感じる。広いリビングで、一人立ち竦んだ。