囚われのシンデレラ【完結】
「俺は大丈夫だ。遥人は、俺の友人だった人間だ。責任を感じるのは当然のこと」
あずさの背中に手を置き、なだめるようにさすった。
「それでも、辛い気持ちがないわけじゃないでしょう。私では頼りにならないかもしれないけど、ここにいるから。私にもたれかかったっていいんですよ」
俺の胸に顔を埋めて必死に訴えて来る。
「と言うか、そうしてください。その方が嬉しいの」
「十分、力になってくれてる。今は一人じゃないって思えるから」
あずさがいてくれる。こうして帰ってくれば、あずさがいてくれる――。
「今、どうしても調べなければならないことがある。漆原とうちの関係がどうも不自然で。俺が独自に調べているところなんだ。それを見つけ出さないと、完全に前には進めない気がしている」
俺の胸から顔を上げて、その表情を強張らせた。
「独自にって……お父様に隠れてっていうことですよね?」
「そうだ。父が俺に何も言わない以上、自分で調べるしかない。俺の勝手な想像だが、すべてはそこから始まっている気がするんだ。公香さんとの関係を完全に清算するには、必要な事実だと思っている」
そう言うと、あずさが一瞬辛そうに顔を歪めた。
あずさには、公香さんは絶対に助かると言ったけれど。万が一ということもある。
その時のためにも、絶対に必要な真実だ。
「俺たちにとっても公香さんにとっても、新しくやり直すために避けては通れないものだ」
「西園寺さん。これだけは約束して」
俺の手を取り、その視線を俺に向けた。
「その真実が分かって、それがどんなものであったとしても、私と一緒にいるって約束してくれませんか?」
あずさの意思の強い眼差しに、軽い言葉を吐けない。
「西園寺さんは私を好きだと言ってくれた。だから、お願いです。本当に私を想ってくれるなら、何があっても私と一緒にいて?」
握りしめる手の強さが、あずさの想いを表しているようで。俺は、頷いてしまっていた。
「一緒にいるよ」
「良かった……」
その心からホッとしたようなくしゃっとした表情に、何故か胸が痛んだ。