囚われのシンデレラ【完結】
「確かに、あの頃遙人に気持ちを打ち明けられたとしても、同じ気持ちを返してやることは出来なかった。でも、おまえの気持ちを否定することはなかったと思う」
「佳孝……」
激しく揺れる遥人の目が俺を見上げる。
「一人の人間として遥人のことを大切な人間だと思っていたから。そんなおまえの気持ちを、否定なんて出来ない」
遥人が手のひらで顔を覆い、肩を震わせる。
「でも、おまえは違った。結局は俺のことを信じていなかった。だから、真正面から向き合わず裏で姑息な真似をした」
男だからということが、遥人にとってどれだけ高い障壁になったのか。俺が完全に理解してやることは出来ない。
「それだけじゃない。遥人は、俺の気持ちも否定したんだ。もしおまえが、俺のことを一人の人間としても見てくれていたなら、それがたとえおまえにとって苦しいものでも、俺の気持ちを尊重してくれたんじゃないのか?」
これまで通りの関係ではいられなくなるという恐怖もあったかもしれない。
でも。
「俺は、今でも思うよ。おまえには、理解してほしかったと」
「佳、孝……」
「俺にとって、唯一無二の親友だったんだ」
遥人から嗚咽が漏れる。突っ伏す遥人を見ていると、人を愛するということが何なのか分からなくなって行く。
その激しく震える肩の意味するものは何なのか。悔しさか、後悔か、もしくは懺悔の気持ちか。