囚われのシンデレラ【完結】
「離婚……って、どうして、ですか? 一緒にいられないってこと?」
「……ごめん、あずさ」
西園寺さんの絞り出すような声に、ふるふると頭を振る。
「そんなの嫌です。何があっても私と一緒にいてってお願いしました。西園寺さんも一緒にいるって約束してくれた。それなのにどうして? 西園寺さんは、私と離れてもいいって思ってるの?」
「ちゃんと話をするから聞いてくれ。あずさに分かってもらえるまで、どこにも行かないから。俺の話を聞いて――」
西園寺さんと別れる――。
そんな想像すらしたくなくて、西園寺さんの手を振り払った。
「別れるための話なんて聞きたくない……っ」
分かっている。子供みたいなことを言っていると。ただの我儘で西園寺さんを困らせている。
でも、そんな話聞いてしまったら、すべてが本当に終わってしまうような気がして。身体と心全部で拒否してしまう。
「あずさ。お願いだ」
逃げるように西園寺さんから顔を背けた私の肩を、西園寺さんが強く掴んだ。
「俺は、この7年、間違った真実の中を生きていた。それがどれだけ苦しいことか分かっているから、今度はちゃんと話をしたいんだ」
肩から滑り落ちて行く西園寺さんの手のひらから伝わる。西園寺さんの心の苦しさがどうしても伝わってしまう。
「あずさのことが何より大切だから。何があってもあずさを守りたい」
辛そうな目が、必死に私を見つめている。
西園寺さんは強張った私の手をずっと握りしめたままで、起きていることすべて話してくれた。
「――それって、西園寺さんが一人で闘うということですよね? そんな西園寺さんと離れるなんて絶対に嫌です。だって、私は妻でしょう? 苦しい時こそ一緒にいて乗り越えたい。そばにいて支えたいの」
考えただけでも不安しかない。せめて、一番近くにいて西園寺さんを支えたい。
「漆原はまともじゃないんだ。言う事を聞かず秘密まで暴く俺にどんな報復をしてくるか分からない。それが俺に向けばまだいい。でも、俺ではなくあずさに向けられたら――」
「ちゃんと気を付けるから。自分の身くらい自分で守れます」
「そんな甘いものじゃない。漆原のバックにいるのは恐ろしい人間だ。あずさ一人くらいどうにでも出来る。それを分かってくれ」
西園寺さんと別れて、また離れるの――?
もう、西園寺さんのいない生活になんて戻れない。
「だったら、別れる以外の方法を一緒に考えよう? 何か、他に方法があるかもしれない」
「俺も何度も考えた。でも、あらゆる危険から完全にあずさを守るにはこうするしか選択肢はなかった。あずさが危険に怯える必要もなくなる。離婚して完全に離れて暮らせば、もうあずさに目を向けることはない。俺は、あずさのこの先の未来を守りたい」
「守ってくれなんて頼んでません!」
「あずさ――」
目の前にいる西園寺さんの首にきつく腕を回す。どこにも行かせないようにと、絶対に離したくないと、西園寺さんにしがみつく。
もう、駄々をこねる子供だ。それでも、私にはこうすることしか出来ない。