囚われのシンデレラ【完結】
薄いグレーの春らしいニットと黒いパンツ姿で、耳にはイヤホンをしていた。声を掛けるのも忘れて、その姿をつい見つめてしまう。
「あ……進藤さん」
そんな私に西園寺さんが気付き、イヤホンを外して私に笑顔を向けてくれた。それに我にかえり、私も慌てて頭を下げる。
「こ、こんにちは! お待たせしましたか?」
「いや、俺がちょっと早く来すぎただけ」
西園寺さんと私がお互いに駆け寄り、向き合った。
「忙しいのに、時間取ってくれてありがとう」
「い、いえ、とんでもないです」
ロボットのように、かくかくとした動きになってしまう。
「7時くらいまでなら時間あるんだよね?」
「は、はい。すみません、こっちの都合に合わせてもらって」
この場所にしてくれたのも、私のこの後のバイトのことを考えてくれたからだ。
「いいよ。俺は、今日一日休みだから。じゃあ、早速行こうか。少し早いけど、夕飯も兼ねて」
「今日は、よろしく、お願いします!」
どこから来るのかというくらい、緊張にまみれている。この身体の動きが物語る。普通に振舞いたいのに、上手くできない。
「こちらこそ」
ちょっと、笑ってる――?
私の動きがおかしいこと、気付かれているかもしれない。西園寺さんが、どこか笑いをこらえるように私を見ている気がする。
恥ずかしい。恥ずかしすぎる……。
西園寺さんが連れて来てくれた場所は、駅からほど近いカフェレストランのようなところだった。