囚われのシンデレラ【完結】
「――本当はちゃんとしたレストランの方がいいかと思ったんだけど、早い時間だとまだディナータイムが始まらないから。でも、ここの飯もなかなかいけるんだ」
「い、いえ。私にとっては十分、素敵なお店です!」
大きな窓から取り込む外の景色が、店内を開放感いっぱいにしている。明るいカジュアルさが、とても居心地がいい。
「実は俺も、ここが一番気に入っている店なんだ」
一番のお気に入りのお店に連れて来てくれたんだ――。
そう思うと、胸のあたりがきゅっと鳴る。
窓際の席に案内され、向い合って座った。オススメだというサラダと、スープ、そしてお肉料理を注文した。
「……ここのカクテルも結構美味しくて。あぁ、でも、進藤さんはまだ二十歳になってないんだったな。確か、誕生日、今月だって言ってたけど、いつ?」
メニューを閉じると、私に目を向けた。
「30日です。4月30日……」
この前、勢いで『来月です』なんて言ってしまったけど、ほとんど5月みたいなものだ。
少し大人ぶってしまったことを、今更ながらに恥ずかしく思う。
「30日か……。分かった」
「え……?」
「いや、こっちの話」
そんな私の子供な思考がバレてしまっただろうか。
「それより、最近、クラシックを良く聴くようになって。特に、バイオリンの曲。進藤さんの影響だ」
「私の、ですか……?」
「そう」
西園寺さんが頷く。