囚われのシンデレラ【完結】
次の日、いつもより身体が楽なのに気付く。
いつもは満員電車でほぼ立ったまま帰宅していたのが、心地よいシートに座り家の前まで送り届けてもらい挙句の果てには熟睡までして。
もう、何度目だろう。大きく溜息を吐く。
図々しい女だと思われなかったかな。嫌われたら、どうしよう――。
西園寺さんと過ごす時間の出来事すべてに敏感になり、一喜一憂する。
それから毎週木曜日、西園寺さんはコンビニの前に迎えに来てくれた。
申し訳ないと思いながら、週に一度のその日を楽しみにしている。そうして迎えた3回目の木曜日のことだった。
「ありがとうございました」
「――あのさ」
家の前に着いたところで、西園寺さんが私に身体を向けた。
「今度の水曜日だけど、バイトないよな?」
「はい。水曜日はバイトを入れていませんが……」
いつもの別れ際とは違う表情がそこにあった。
「その日だけは、大学の後、俺に時間をくれないか」
どこか探るような、それでいて強い眼差しだった。
「――はい。分かりました」
西園寺さんは「ありがとう」と言った後、それ以上詳しいことは口にしなかった。
約束の水曜日の前の晩、柊ちゃんからメッセージが届いた。
【明日、おまえの誕生日だろ。美味いもん食わしてやる】
明日、誕生日だった――。
その時、思い出した。
手にしているスマホが重い。
【ごめん。明日は予定がある】
それ以上聞いて欲しくないという気持ちが、この返信を送る指に躊躇いが生まれる。
『俺は反対だ』
以前柊ちゃんに言われた言葉が、何度も何度も脳内を駆け巡る。でも、私の中に答えは一つしかない。