1000年後の約束をしよう
三年間という短い時間を共に過ごした仲間たちの顔が頭に浮かぶ。三年生の後半を迎えた時、みんなの笑顔はどこか不安そうなものになっていた。だが、それを口にするのは怖く、誰も気付かないフリをしていた。旬もそうだ。

部屋のドアノブをゆっくりと回す。大正時代に建てられた旬の家は古く、ギイギイと耳障りな音が暗闇に響いた。

ギシギシと軋む廊下をまるで泥棒のようにゆっくりと慎重に移動し、木造の急な直階段を手すりに掴まりながら降りる。階段を降りると目の前にあるのは玄関のドアだ。

「行ってきます」

小声で呟き、旬はドアの鍵を開けて外へと出る。外は一歩踏み出した刹那、旬の体を冬の冷たい風が包み込み、ブルリと体が震えた。風には冬のどこかツンとした香りと、潮の香りが混じっている。

家の横に停めてある自転車に飛び乗り、誰もが寝静まる町を走って行く。シンと静まり返った町は、まるで異世界に迷い込んだような感覚を覚えさせた。
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